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六花ノ雨音

六花恵のABUNAI日記。思うままに世界を楽しむブログです。アクセサリー作家、トータルビューティー、音楽、アートなど。

ある時ふと

ある時女はふと、真っ当に生きてみたいと思った。

もう若くないと周りは決めつけ、そろそろ落ち着けと言う。

その言葉通りに、いい子な友人たちは落ち着いていく。

けれど女には、落ち着くという言葉の本当の意味が分からない。

だから、真っ当に生きようと思ったのだ。

 

次の日目が覚めた女は、死にたい気持ちになっていることに気付く。

「これは一体何だろう・・・?」

正体不明の不安と絶望が、女の体にまとわりついて離れない。

自らを鼓舞した女は、それを振り払うように就職活動にいそしんだ。

 

毎朝早くに起きて、自分の為にお弁当を作り

同じ時間の電車に乗り、いつもの椅子に座り

電話を取って、パソコンをいじって、むくんだ足を放り出して

冷えたお弁当を温める。

午後は眠い目をこすりながら、ひたすら時間が経つのを待つ。

きちんと働いたからお金は増えたが、生きる情熱は冷えきってしまった。

「これが真っ当に生きるということか・・・」

 

水曜日、女はなぜかベッドから出ることができなかった。

正体不明の不安や孤独が、隣で添い寝していたのである。

「久しぶりだな。楽しいか?」

不安と孤独は、女にそう話しかける。

「楽しいわけない。」

女は答える。

「じゃあ何でそんな仕事をしている?」

余計なお世話だと思いつつ、女は睨みを利かせて答えた。

「周りのためだよ!」

 

女はその日、初めて無断欠勤をした。

求められている自分を演じきる力は、自分にはない。

自分に嘘はつけない。私は真っ当に生きることができないんだ。

新たな自分を発見した女は、部屋の窓を開けて不安と絶望を追い払った。

これからは自分のために生きる。例えそれが「真っ当に生きること」じゃないとしても。

 

次の日女は、笑顔で辞表を出した。

 

 

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